皮脂は皮膚常在菌の働きにより弱酸性にして細菌やウイルスからの侵入を防ぎ、乾燥から守る保護膜の役割と保湿剤の役割があります。皮脂がないと人は生きていけません。
雑誌等のマスメディアを通じて「頭皮のマッサージ法」を紹介している記事が多くなりました。
それだけ、髪の毛や頭皮に不安を持っている人が多い、ということなのでしょう。
で、本題はここから。
私はこれらを見ていて、いつも感じることがあります。それは、問題の本質をすり替えているのではないか?と言うこと。
ネットなんか見ていても、美容師さんとおぼしき人が頭皮のマッサージ法を紹介しているのを見ますから、余計に感じます。
薄毛の本当の問題や原因は、頭皮を悪くしている習慣にあります。中でも一番の問題は、普段行っているヘアケアやカラー・パーマ・縮毛矯正です。
他にも、ストレスやら食習慣やらいろいろありますが、一番直接影響のあるヘアケア・カラー・パーマ・縮毛矯正をすっ飛ばしていると本質に辿りつけなくなります。
頭皮のマッサージを推奨する人がおっしゃるのは、「頭皮を柔らかくしましょう!」です。
先天的に(生まれながら)頭皮が硬い人が柔らかくなるのかどうか?柔らかくしてしまって良いのかどうか?です。
以前、頭皮のマッサージを育毛のケアの中心にしていた何人かの方のご相談を受けました。
これらの方の頭皮の共通項は、頭皮がズルズル頭蓋骨上を滑るかブヨブヨした感じの頭皮にしてしまっているのです。
硬い頭皮を柔らかくするべく頭皮のマッサージをして、本来の頭皮でなくなってしまい毛が育たなくなっているのです。
薄毛の人の頭皮が硬くなっているのは、先天的に硬いのではなく頭皮が硬くなるような習慣にあります。要は、後天的に頭皮を硬くしているのが問題なわけです。
後天的に頭皮を硬くするものの代表例が毎日のヘアケアであり、カラーであり、パーマ・縮毛矯正だと言えます。
理由は、皮脂を取り過ぎたり、コーティング処理剤を残留させたり、カラー剤を入れ込んだり、髪の形を変えたりする行為は、全て頭皮と言う皮膚に何らかの刺激を与え続ける行為だからです。
皮膚は、何らかの刺激を与えられ続けると、緊張してその刺激を防ごうと防御する反応を示します。緊張すると毛細血管の血の巡りが悪くなるので薄毛になるのです。
私のところでは、最初のご相談時にはお湯だけで頭皮を洗います。すると、温浴をすることで皮膚刺激になっているものが取れ、頭皮の緊張が緩んで本来の頭皮に戻ります。
その人本来の頭皮の硬さ・柔らかさに戻るので、血行が蘇り毛に元気が出て腰やハリも蘇ります。
ただし、前述のように頭蓋骨を滑るような頭皮・ブヨブヨにしてしまった頭皮は元には戻りません。
こんな頭皮が元に戻るには、相当な年月がかかります。
もうお分かりだと思います。
頭皮のマッサージの目的は、毛の多い人と同じような柔らかい頭皮にするのではなく、ご自身の本来の頭皮に戻してあげることなのです。
この目的を間違えるから、おかしな頭皮にしてしまうのです。
頭皮のマッサージの目的
この3つを目的にして下さいませ。
毛が太くて本数の多い人は、頭皮が柔らかいです。毛が細くて本数の少ない人は、頭皮が硬いです。
ここにも頭皮のマッサージが勧められる理由があります。
が、ここで言う柔らかいのは、弾力がある柔らかさであって、頭皮が動くことではありません。
ここで言う硬さは、弾力がなく触ればすぐ頭蓋骨で皮膚が頭蓋骨にへばりついている感じのことです。
当然、上記2つの間には、色んな柔らかさ・硬さがあります。
頭皮が硬い柔らかいは、その人が持って生まれた素質なので変えることはできません。
例えば、50メートル走をあなたは何秒で走れますか?小学校の時何秒で走れたでしょう?
早い子なら6秒とか7秒で走れたでしょうが、遅い子なら15秒もかかったでしょう。
遅い子でも努力して練習すれば、11秒とか12秒くらいで走れるようにはなるでしょうが、絶対に6秒とか7秒で走れるようにはなりません。
頭皮の硬い・柔らかいと、それに伴う毛の少ない・多いも素質ですので毛の少ない人が多い人と同じにはなりません。
多い人と同じにはなりませんが近づけることは可能なので、その為の頭皮のマッサージ法を摂って下さい。
頭皮のマッサージの目的
260号は平成24年(2015年)4月4日に配信したメールマガジンです。
私がこの仕事を本格的に取り組み始めた時から今まで、皮脂のことを問題する情報が減ったことがありません。
たぶん、「薄毛になっている」時の頭皮の状態や、毎日キレイに洗っている頭皮が当たり前になっているからだと思います。
私が子供の頃や大学生の頃までは、ほとんどの人が週に1回洗髪するのが普通でした。
特に子供頃は、自宅にお風呂がない家庭もあり、銭湯にいくか近所のお宅のお風呂を借りていたからです。
1960年~1970年頃からでしょうか?
自宅にお風呂がある家庭が増えて、女子高生から毎日の朝シャンが流行りはじめました。
そして決定的なのが、1990年代の育毛サロン各社のマスメディアを通じての広告とTV番組での特集です。
今でもサロンを紹介する雑誌なんかの特集記事で見るように、皮脂を取って綺麗にすれば「毛の生育を邪魔し塞いでいる皮脂と汚れが落ちて、毛穴が開いてこんなに綺麗になるのですよ」と放映され記事にもされたのです。
そして、皮脂が薄毛の原因とされてしまい、「ハゲたくなければ皮脂を取れ!」と思わされてしまったのです。
清潔好きの日本人からすると「人の体は汚れているのが普通」と言うと、おかしな人とか変な人と思われますが、皮膚には皮膚常在菌が住んでいて人と共生関係にあります。
皮膚常在菌は人の体が分泌する皮脂を餌として生きていて、その分泌物と汗とが混ざって皮膚表面を弱酸性に保つ皮脂膜を形成し、人の体を細菌の侵入や乾燥から守っているのです。
皮脂は人の体を乾燥から守る保湿剤でもあるのです。
ですから、皮脂は結果的に毛の生育には必要な分泌物だと言えます。
表現はおかしいですが、普通に汚れていることで人は正常に生きていけるのです。
普通に汚れていることで正常な皮膚になっているのに、これを乱す行為が皮脂を取り去る行為です。
皮脂と皮膚常在菌は、人が生きていく為には必要なものです。ですから、皮脂を取り去ることを続けていると再分泌を繰り返します。
1990年代の前からの毎日の朝シャンから、それ以降は皮脂を取り過ぎるシャンプーで皮脂を取る方法をとってきているのですから、皮脂の分泌が増えている人がとても多いです。
結果、清潔にして皮脂の分泌が増えた分皮膚常在菌のうちの黄色ブドウ球菌等の悪玉菌の繁殖が活発になり、その分泌物が臭うようになっている人までいます。
要は、化学肥料や農薬で土地のエコロジーが乱れて痩せるように、頭皮のエコロジーが乱れて衰えている人が増えているのです。
雑誌やネット上のサイトでは、ヘッドスパをすると「使用前→使用後」のように毛穴がキレイに開いた写真をよく見ます。
これが正常だと記述されていますが、本当に良いことなんでしょうか?
「この方が異常だ!」って私には感じられます。
使用前の頭皮の状態がとても汚れて見えるのは、今まで皮脂を取り去るようなケアを自分でしているからです。
皮脂を取るようなケアを改めて、ご自身本来の皮脂と皮膚常在菌の状態に戻れば、皮脂を取ってキレイにしなくても普通になるのです。
その普通の状態が分からないから、皮脂を取った後のキレイな状態を普通だと思ってしまうのでしょう。
弊社のご相談者の中には、ご自分でマイクロスコープを持っていて、常にご自分の頭皮の変化を確認していらしゃる方がいます。
その方が以下のようにおっしゃっていました。
皮脂を取って綺麗にしていた時よりも、皮脂を取らずに皮膚の状態が正常になった今の方が綺麗だと。
ただし、シャンプーで頭皮をキレイにして皮脂を取るのが駄目なら、皮脂を取らない湯シャンだけが良いのかどうかは私には分かりません。が、私自身湯シャンをお薦めする場合があります。
それは、本当の頭皮の状態を確認したい時と頭皮の異常さが半端なく悪く水しか使えない時です。
頭皮の状態が悪くない時には湯シャンでもいけるかもしれませんが、通常頭皮の状態が悪い人が多いので、湯シャンでは少々難しいかもです。
259号は平成27年3月21日に配信したメールマガジンです。