薄毛と脱毛症は症状が違うから治り方も違う。育毛剤の広告や育毛サロンの広告では薄毛を脱毛症が治る効果で治そうとしている。
世間の育毛剤の広告や改善事例を見ていると、薄毛と脱毛症を一緒くたにしているものがほとんどです。
薄毛と脱毛症は症状自体が根本的に違います。治り方も全く違うので同列に捉えていると上手くいきません。
特に、薄毛のケアをする際に脱毛症を治すつもりで取り組むと、ほぼ間違いなくケア法を間違えて毛を無くす可能性が高まります。
そこで、医学の世界では男性型脱毛症をどう捉えているか?を調べてみました。
2010年に日本の皮膚科学会が発表した男性型脱毛症診療ガイドラインに以下のような説明があります。
ーーー以下原文を掲載します。
男性型脱毛症とは、毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包が多くなることを病態基盤とし、臨床的には前頭部と頭頂部の頭髪が軟毛化して細く短くなり、最終的には額の生え際が後退し頭頂部の頭髪がなくなってしまう現象である。
休止期脱毛とは異なり、パターン化した脱毛が特徴である。
ーーーここまで
上記の男性型脱毛症の病態を簡単に要約すると
これを読んでどう感じますか?抜けることが問題だと思うでしょうか?
誰が読んでも、抜けることが問題だと読めないと思います。成長期が短くなって、太く長く成長しないのが薄毛の問題なのにどうして脱毛症と表現するのでしょう?
とっても不思議な表現を医学会では使いますね。
通常は
男性型薄毛:額と頭頂部から段々と成長しなくなり薄くなっていく。
女性型薄毛:頭頂部全体に渡って段々と成長しなくなり薄くなっていく。
と表現すべきだと思います。
そうしないと、大きな過ちを犯してしまいます。
現に、某育毛サロンのCMは「抜け毛を減らして発毛させよう」なんて広告を大々的にうっていますし、リアップのCMは「強く、太く、発毛」なんて謳っています。
効果効能でも「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」なんて謳っています。「脱毛(抜け毛)の進行」って表現もおかしなものですよね。
ただ、抜けることが問題なるものがあります。それが、本当の意味での脱毛症です。
本当の意味での脱毛症は、円形脱毛症やびまん性脱毛症を言います。
脱毛症を理解する為に毛周期についてはよくご存知の方が多いと思いますが、よく分からない人もいらっしゃるでしょうから簡単に書いておきます。
1本の毛が「発毛し→1.成長し始めて→2.十二分に成長し→成長が止まり→抜けて→発毛し→1.成長し始めて→2.十二分に成長し・・・」を繰り返すのを毛周期と言います。
上記の毛周期を繰り返して、全ての毛が生まれ替わるのに、男性で2年~3年・女性で4年~6年くらいでは?と言われています。
薄毛とは、生え替わりながら段々と、上記の毛周期の「1.成長、2.十分成長」の期間が短くなり「成長が止まりから発毛し」までの期間が長くなっていく現象です。
男性の場合は、2年~3年の毛周期を2回か3回繰り返しながら、段々と額の後退や頭頂部の薄毛が表面化します。
女性の場合は、4年~6年の毛周期を2回か3回繰り返しながら、段々と頭頂部全体が薄くなるのが表面化します。
ですから、男性も女性も薄毛が表面化するのに何年もの年月がかかっているのです。
改善する際は、毛周期を繰り返しながら段々と太さが戻ってきて、成長期が伸びるようになっていくので年月がかかるのです。
ただ、寿命や太さがゼロになった毛は戻りません。
何かの原因があって、上記毛周期の「1」か「2」の成長期の段階で、いきなり抜けて生え替わって来ないので数日か数か月で毛が無くなります。
部分的に円形に無くなるのが円形脱毛症で、全体的に毛が無くなるのがびまん性脱毛症です。
成長期や太さがゼロになっているわけではないので、原因を解決できれば1年程度の短期間で元に戻ります。
それも、毛の無い部分にいきなり太くて黒々した長い毛が戻るので見違えるような回復の仕方をします。
薄毛と脱毛症の違いが分かると、某育毛サロンの「抜け毛を減らして発毛させよう」とか、リアップの広告の「強く、太く、発毛」とかは薄毛が治る効果ではなく、脱毛症が治る効果だと言えますね。
男性型脱毛症と言われるものは、本当は男性型薄毛であって脱毛症ではありません。女性の場合も、女性型薄毛であって脱毛症ではありません。
でも現実問題として、抜け毛が増えて薄くなってしまった。これって脱毛症じゃないのか!と訴える方もいらっしゃるでしょう。次号では、その辺のことを詳しく記述しますね。
251号は平成26年(2014年)11月29日に配信したメールマガジンです。